情緒的な身体

いま読んでいるのは、岡潔さんの『春宵十話』。

人の中心は情緒。知的センスがある大人に憧れる。一部を引用します。『生まれて六十日目ぐらいの赤ん坊ですでに「見る目」と「見える目」の二つの目が備わるが、この「見る目」の主人公は本能である。そうして人は、えてしてこの本能を自分だと思い違いするのである』#岡潔 #情緒

岡潔氏は数学者として研究を続けていらしたかたですが、人に必要なのは情緒なのだ、それが健全に育たなければ数学もわからないんだと仰っています。この本は人が成熟して物事を捉え豊かに生きていくにはということを考え抜いた氏の言葉がつづられています。

ここでいう情緒って、佇まいとか風情って言葉でも表現できるかなと個人的には思います。出くわしたときに、身体の中で起こる心の動きや、言葉を越えて感じることのできる雰囲気のようなもの。

空を見上げて「晴れている。青い空だな」と言葉では表現できますけど、実際の空って真上の青色と地上に近いほうの青色とでは違う色をしているし、夏のむんむんとした空気越しに見る空と、真冬のきんと透き通った空気越しに見る空とでは感じるものは全く違う。

そういう差を身体で感じるということを言ってるんだろうなあと、いつも身体を見る・感じることと絡めて受け取ってしまう私には読めてしまいます。

人の身体もとっても情緒的で、その日のケアの内容を決めていくにも、クレイを選ぶのにも、お肌の状態、身体の歪み、会話の調子、ちょっとした仕草、表情の移り変わり、そういったものすべてを雰囲気・佇まいとして感じ取って決めていくところがあります。

ここが疲れている、ここが不調なのという主訴にアプローチするにあたって、そういう情緒的な情報収集は必要です。

たとえば膝の痛みというお悩みがあったとてして。それが

「毎日友だちと共にウォーキングするのが楽しくて仕方ない。ついついたくさん歩きすぎてしまうようだ。」

というのと、

「少し運動しなくては身体に悪いとテレビで言っていたことから、将来的に身体を壊すのが怖くてウォーキングを始めたけれど、膝が痛くなり続けてよいのかわからない」

というのとでは、同じ膝の痛みでも身体を整えていくための提案は変わります。ご本人が詳しく説明してくれれば分かりやすいですが、うまく聞きだせないこともありますね。

ぱっと身体を見ただけであなたのことを言い当てる!ということではなくて、情緒的な見かたでその人の背景を捉えるのです。

どうしても人って決めつけたがるし、決めてほしがりますね。ここは良い悪い、それは○○というものですね、こうすれば良くなりますよ、などなど。

そういうことでなしに、まずはただ「そうある」ということを受けとり、それをもとにケアをしていくんです。

季節の移り変わりや時を経て徐々に姿を変えていくもの。そういう自然の姿を見るように人を見て、そのかたのありたい姿、豊かな姿に近づいていくためにどうしたらよいかを探っています。

たまには具体的な話もしないと。次はクレイの話題にしましょうね。今日も読んでくれてありがとうございました。

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